シンガポールの言語政策
シンガポールでは、国民が各民族の言語と英語を話すことができるようにするという「二言語政策」をとっており、大部分のシンガポール人はそれぞれの民族の言語と英語を話すことができます。もっとも、これは現行の教育政策による教育を受けた人たちということで、40、50代といった一定の年齢以上の人たちには、英語があまり通じない人も結構いました。しかし、そのような人たちでも片言の英語は大体話すことができ、日本の高校程度の英語教育を受けた人よりも会話ということに関しては、優れているのではないかとさえ感じました。
妻が妊娠したために、少しの間、家の掃除などをお願いしたシンガポーリアンのお手伝いさんも、年齢は50代くらいで英語は得意ではないようですし、書くことはまったくできず、必要な場合は子供に書いてもらっていたようですが、会話に関しては、単語をつなげるような感じではありましたが、ちゃんとできていました。
華人(中国系。「華僑」という言葉に対して、移り住んだ国に住みついて、完全にその国の国民になっているということで「華人」という言葉を使っているようです。)の人たちは、現在華語(マンダリン、北京語)が標準語とされており、学校の母国語教育でも華語が教えられているのですが、もともとシンガポールに住む華人の人たちは中国の様々な地方から移り住んできたため、それぞれの地方の中国語を話しており、現在でも各家庭では、もともとの出身の地方の中国語を話しているということです。しかも、それらの中国語はかなり異なっており、出身が違うと全然話が通じないということもあるようです。
私の周りにいる中国系の人たちの家庭も広東、福建、潮洲、客家(これは、出身地方ということではありませんが)などがもともとの出身で、家ではそれぞれの中国語の方言を話しているということです。彼らは、その他にも華語と英語は話せるわけですから、それだけで彼らが理解できる言語は三つにもなります。それ以外にも、華人の人たちも基本的なマレー語はわかるようで、彼らの言語に対する意識というか考え方は、我々日本人とはかなり違ったものがあるのでしょう。
私の場合、買物など生活の場ではもちろん、仕事も外部とのやりとりはすべて英語で行いました。したがって、英語が自然と上達しているのではないかと思われるでしょうし、私もシンガポールに行く前はそう考えていたのですが、結局英語の力はあまり上達しなかったようです。いくら英語で仕事をするといっても、事務所内ではほとんど日本語ですし、英語についても仕事上非常に重要な部分については、レターのやりとりにより行うことが普通であり、しかも、どうしても会話での交渉が必要な場合は、事務所のローカルスタッフにやってもらうこともできるということで、実際のところ英会話が上達するような環境ではなかったようです。

また、仕事で、東南アジアの国々の政府関係者等を対象にした国際会議を開催する業務の担当になったときには、会議の準備のためにタイをはじめ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムといった国々の政府の地方自治関係者や大学関係者と接し、また、英語で協議を行い、会議を作り上げていったということで、非常に貴重な経験をしたのですが、この英語による協議、交渉というのは、私には非常に大変なものでした。というのは、相手国の担当者も、英語を完璧にこなせる人はほとんどいないため、意思の疎通を完璧に行うというのが大変で、英語で打合せをしても、必ず後日その時の合意事項についてレターで確認を行うという作業が必要でしたし、日本人相手だと1分の電話で済む話が1時間かけてレターを作成してFAXするということもありました。ただ、一般に東南アジアの国々の政府職員というのは日本同様(?)エリートであり、ほとんどの職員はアメリカ、ヨーロッパ又はオーストラリア等に留学した経験を持っているようで、我々よりははるかに英会話は上手でした。

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